後縦靭帯骨化症(OPLL)の回復期リハビリ|日常生活を取り戻す作業療法【OPLL2-6】

後縦靭帯骨化症
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※当サイトの記事は、筆者が実際に専門家の指導のもとで行ってきた治療・リハビリの体験をもとに記しています。治療方法や経過には個人差があり、すべての方に当てはまるものではありません。実施にあたっては、必ず主治医やリハビリ専門職にご相談ください。

 作業療法のリハビリは一見地味に見えます。しかし、日常生活をいかに快適に過ごせるか、仕事をいかに負担なくこなせるかといった点で、その出来・不出来によって精神的な負担は大きく変わってきます。


 箸を使っての小豆の移動が、不器用ながらもできるようになると、次なる指先の訓練として、パソコンのキーボードとマウスの操作訓練が始まりました。

 パソコンに触れると、「いよいよ現実が近づいてきたな」という気持ちが湧いてきます。とはいえ、できる運指はパソコン初心者のそれに過ぎません。
 私自身、元々ブラインドタッチはまったくできませんでしたが、不思議とキーボードを打つスピードは、絶望するほど遅いものではありませんでした。

 しかし、このリハビリでは、人差し指で一つひとつ打つのが精一杯です。これでは、たとえ社会復帰を果たしたとしても、「あなたの仕事はいつ終わるのか」と言われかねません。

一本指でのタイピングから再出発。不器用でも、その一打一打が社会復帰への確かな足跡になります。
”不器用でも、その一打一打が社会復帰への確かな足跡になります”

© いらすとや

ですからこれ以降、手や指の訓練に熱が入ったのは、言うまでもありません。

【副産物】スマホ操作の回復

 しかし、この訓練で思わぬ副産物が出てきました。指を強制的に動かすように訓練したため、スマホの操作がタッチペンを使わずにできるようになったのです。

これはありがたかったです!


更衣のコツ

 社会復帰のためには、手指のリハビリだけで終わるわけにはいきません。輪投げやお手玉投げなどによる、肩や腕の可動域を広げる訓練も始まりました。

 私は手足ともに右側の回復が遅かったため、物をつかむときは左手が主になります。また、上着を着たりズボンをはいたりするときは、動きにくい右側を先にしないとうまくいきません。

 特に利き手側である右肩の動きの悪さ(痛み)は、リハビリだけで治るものではありませんでした。後に肩関節への局所注射によって多少の緩和は確認できましたが、結局、左側と同じように動くことはありませんでした。

 後日談になりますが、右腕・右肩の可動域は、入浴後などに身体(特に背中)を拭く際、意識して右腕を高く上げる動作を毎日続けることで、多少の改善が見られました。


肩の可動域と日常動作

 入院4か月後になると、着替えはほぼ自分一人でできるようになりました。コツは、動きの悪い右側を先に着て、後に多少動きがよい左側という順番です。

 多少なりとも右側、特に右腕が動くようになってきたのは、輪投げやお手玉を投げる訓練のおかげです。何かを数メートル投げて、目標の籠や的などに入れる。単純そうですが動きが悪い方で実践するとなかなか上手く行きません。

 これは、本人の根気強さはもちろん必要ですが、スタッフの方はおそらく私以上の根気強さが必要だったと思います。今でも感謝の気持ちは尽きません。


 しばらくして、バスタブを跨ぐリハビリもメニューに加わりました。前述のとおり右側の動きが良くないので、高さ40cmのバスタブを跨ぐことなど当初は到底無理でした(それだけ障害のある脚はなかなか上がらなかったのです)。

 しかし、リハビリ専門病院では、このような場合でも訓練ができるよう工夫されています。それは、バスタブ自体が上下するのです(※深さは変わりません)。

 浴室用の手摺にしがみつきながら、まずはわずか10cmの高さを跨ぐところから始まります。日を追うごとに、その高さは徐々に高くなっていきます。
 脚が自分の意思どおりに動かないため、大変な思いをしますが、これができなければ一人で入浴する許可は下りません。退院後も、見守られながらの入浴となってしまいます。

 「跨ぐ」という行為には、平行棒につかまって行う腿上げの横移動訓練が効果を発揮したように思います。そのおかげで、退院前にはバスタブを跨げるようになっていました。リハビリ病院ならではの設備に助けられました。


筆記訓練

 自助具を使いながらでも、ペンを握って毎日書く練習をしたため、利き手で紙一杯に縦・横線がほぼ真っ直ぐ引けるようになりました。また、四角い枠の中に文字を入れることも出来てきました。

 どんなに疲れていても、毎日1時間はペンを持って何かを書く練習をしていましたが、その成果が2か月後に出てきたのです。これで、病院やケアマネジャーとの約束だった自宅平面図が手書きで作れます。
 この図面が仕上がれば、自宅の危険・注意箇所をスタッフの方たちと共有することができ、後日行われる「自宅改修等ミーティング」で、この図面をもとに詳細な意見交換ができるようになります。

薬の自己管理

 今の薬は、PTP包装(Press Through Package / プレス・スルー・パッケージ、プラスチックのくぼみに薬を入れ、アルミ箔で蓋をしたもの)が多いですね。この中に入っている錠剤を上手にこぼさず出すには、「つまむ」や「押す」という細かな動作が必須です。

 しかし、これまで作業リハビリで「コインをつまみ、裏返す訓練」や「ペグボードでの指先の訓練」を行ってきた結果、これら細かい動きが(多少のぎこちなさはあるにせよ)できるようになりました。


 日常生活のためのリハビリには、実にさまざまなものがあります。
 たとえば料理では、麻痺の部位によって包丁やナイフの扱いが難しくなり、怪我につながったり、加熱に手間取って料理を失敗してしまったりすることもあります。そのため、訓練は正確性と時間との勝負になるでしょう。

 加えて、調理師などプロの方の場合、長時間立ち続ける体力だけでなく、繊細な動きも求められます。仕事を全うするためには、体力や体幹を鍛えておく必要があります。

 なお、この時の出来事は「OPLLで仕事は続けられる?|職業選択のリアルと「転ばぬ先の杖」」に記してありますので、興味のある方はそちらもお読みください。

 また、裁縫や編み物では、ハサミや針を扱うため、手や指の器用さと正確性が欠かせません。これも、それらを生業としている方にとっては、やはり時間との勝負になります。

 そのほか、私は実際に経験していないため詳しくは紹介できませんが、言語、聴覚、咀嚼(嚥下)など、身体の一部に特化したリハビリも、症状に応じてさまざまな方法があるようです。障害を負ったとしても、諦めずに取り組むことが大切だと感じました。


 これまで色々なリハビリを紹介してきましたが、無駄なことは一つもありませんでした。最初は「こんなリハビリが何の役にたつのだろう」と思ったものもありました。しかし、あれができる、これができるようになった時、今まで「?」と思っていたリハビリが「あぁ、このためだったのか!」と気がついたのです。

 そして、それら一つひとつのリハビリ(点)は相互につながって多くの線となり、そしてそれらの線が面となって、私達患者を受け止めてくれているのだと気が付きました。

もしこれを読んでいるあなたが、これからリハビリを始めるとしたら、これだけは言わせてください。

無駄なリハビリなんて一つもありません。
焦りは禁物「一生かけて治して行く」つもりでリハビリを進めてください。
できないことより、「昨日より少しできたこと」を数えていきましょう。

——それくらいの気持ちで向き合わなければ、うまくいかないときに心が折れたり、短気を起こしたりして、途中でやめてしまいかねません。それでは元も子もないのです。

項目訓練内容(目標)当事者にとっての重要性達成度
1自力での寝返り・起き上がり全ての動作の基本。自立への第一歩。
2スマートフォンの操作家族や職場とつながるための「命綱」。
3自力での排泄管理人としての尊厳を守るための最大の難関。
4ペンでの筆記(字・図)書類作成など、社会復帰に欠かせない能力。
5箸を使っての食事補助なしで「食べる喜び」を取り戻す。
6着替え(更衣動作)介助なしで生活するための必須スキル。
7車椅子への移乗移動範囲を広げ、寝たきりから脱する境界線。
8歩行器等での自立歩行最終的には補助具に頼らない歩行を目指す。
9薬の自己管理持病(心筋梗塞など)の再発を防ぐ生命線。
10PC操作(キー・マウス)仕事復帰(デスクワーク)への具体的な指標。
11自動車の運転生活圏を広げ、元の社会生活に戻るための鍵。×(訓練中)

※達成度・・◎:達成、〇:ほぼ達成、△:挑戦中、×:未達

 日常生活に直結する訓練により、家事や仕事への道筋が見えてきました。

  • 目標2:スマートフォンの操作(キーボード・マウス訓練により、デジタル機器への適応が加速)
  • 目標4:ペンでの筆記(字・図)(毎日の筆記訓練により、直線や枠内への文字記載が可能)
  • 目標6:着替えができるようになること(肩の可動域訓練と実技により、ほぼ自立へ)
  • 目標9:薬の自己管理(様々な作業リハビリにより可能に)
  • 目標10:PCのキーボードやマウス操作(人差し指でのタイピングからスタートし、再起を誓う)

次は、自動車運転のためのリハビリテーションの様子です。
 退院も間近に迫ってきましたが、やり残したことは山のようにあります。

 この続きは
「後縦靭帯骨化症(OPLL)の回復期リハビリ|自動車運転訓練と退院への準備【OPLL2-7】」
をご覧ください。

 引き続き、無理のない範囲でお読みいただければ幸いです。