障害による「書くこと」の不都合:利き手交換リハビリで見えた景色

後縦靭帯骨化症
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⚠️はじめに
 ここに記載した内容は、私が回復期病院での入院中に、専門家の指導の下で行っていたリハビリの一環です。リハビリの形は人それぞれであり、すべての方に当てはまるものではありません。実施される際は、必ず整形外科医やリハビリ専門職の指導を仰いでください。

 デジタルツールが溢れる現代ですが、やはり人となりを表すのは「手書きの字体と文体」ではないでしょうか。

一生懸命に物書きをする人
”一生懸命に物書きをする人”

 今回は、書くことに向き合った当時の葛藤を振り返ります。

 左手でペンを握って最初に驚いたのは、日本語の文字は驚くほど「右手優位」で成り立っているという現実でした。

  • 「引く」動作は楽だが、「押す」動作が難しい
     左手で書くと、横線などの「押し」の動作で必要以上に力が入り、紙を突き破ったり、ペン先が引っかかったりします。
  • 「書き順」が意味をなさない
     ペン先を引くために書き順を変えてみましたが、出来上がった文字は「止め・はね・はらい」の脈略が失われ、無惨なものでした。

 書き順の大切さを、還暦間近になってようやく骨身に沁みて理解したのです。


 逆の手を使いこなすには、細かい力加減を制御する力が必要です。しかし、私には時間がたっぷりあります。私はベッドサイドの作業台で、ひたすら基礎訓練を繰り返しました。

  1. 線の練習: 紙一杯に、同じ濃さで縦線・横線を引く。
  2. 図形の練習: 斜め線や丸を描く。特に丸は「押す」と「引く」が連動するため、最高の難易度でした。

 一ヶ月ほど続けた頃、ようやく綺麗さよりも「四角い枠の中に収め、他人が判読できる字」を目指すところまで辿り着きました。


 結局、私の左手による筆記が上達することはありませんでした。幸いにもリハビリを重ねる中で右手の機能が回復し、現在は右利きに戻っています。

 しかし、この「左手での挑戦」が、右手の回復をより確かなものにしてくれたと感じています。

  • 握力: ペンを持ち続けられる持久力。
  • 連動: 指先だけでなく、手首や前腕で筆圧を調整する感覚。
  • 意識: 漢和辞典を使い、一画一画「正しい字」を書き写す集中力。

結びに

 今でも時折、左手で文字を書いてみることがあります。上達はしていませんが、その「思い通りにいかない歯がゆさ」を感じるたびに、入院中の必死な自分を思い出します。

 健康な方も、一度左手(逆の手)で日記を書いてみてください。

 不自由さを通して自分の身体と対話することは、きっと「前に進む気持ち」を支える新しい力になるはずです。