入院は2週間ほどで、HCUと個室病室で4~5日を経て後は退院までの10日間余りを4床病室で過ごした。退院後は経過観察のため2週間の休暇をもらい体力回復に励もうとしたが、そこで愕然とした。体力が激減しているのだ。少しの動作でも直ぐに息切れして疲労感が襲ってくるし、時折心臓の鼓動が大きくなったり消えゆくような感覚に陥るのだ。そのため退院直後は「ニトログリセリン舌下錠(※1)」の常備は欠かせなかった。
心筋梗塞を発症する前の私は1日20~30本の煙草を吸うヘビースモーカーだったが、手術後は煙草との縁をすっぱりと切った…調子のよい話かもしれないが「せっかく助かった命。これ以降の人生を大切にしなくてはならないし、家族に迷惑をかけてもいけない」と。
しかし、煙草を止めたからと言ってもたかだか数週間、喫いたい気持ちが無くなった訳ではない。外出すると彼方此方で喫煙者の横を通り過ぎることになるが、まだ肺が汚れているせいか煙草独特の匂いに違和感はない。加えて時折フラッシュバックのように訪れる強い喫煙欲求は、そこに誰かが煙草を燻らしているかのように独特な匂いの幻想が私を襲うのだ。しかし、ここでも私を止めたのは「吸ったら死ぬ!」という強い一念だった。
とにかく体力回復のため、いつでも意志さえあればできるリハビリテーションとして「ウォーキング」を毎日することにした。当然、最初からたくさんの距離を歩ける訳ではないが、継続を第一に考え、少しずつでもよいから距離を伸ばして行こうと思った(※2)。
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※1 ニトログリセリン舌下錠とは、心臓の冠動脈を拡げ血流量を増やすことで心臓の負担を軽くする薬。副作用として血圧低下やめまい等を引き起こす可能性があるため、服用時は安全な場所や状況下で行う事が必要。
※2 後日談となるが、ウォーキングは6年半後の後縦靭帯骨化症(OPLL)発症前まで、ほぼ毎日続けた。
OPLLの維持期(生活期)リハビリ -17- [2019/9]