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OPLL:後縦靭帯骨化症(脊椎靱帯骨化症)について

後縦靭帯骨化症(脊椎靱帯骨化症)とは

 脊椎靱帯骨化症とは、脊柱(※1)のほぼ全長を縦走する靱帯(※2)が骨化することにより脊椎管狭窄を引き起こし、脊髄(※3)又は神経根の圧迫障害を発生する疾患と言われています。靱帯とは本来柔らかいものなのですが、何らかの要因により骨化してしまう現象を靱帯骨化症と言い、その中でも後縦靭帯骨化症(OPLL:Ossification of Posterior Longitudinal Ligaments)は主に頸椎(首部分)、次に胸椎に多く所見できると言われています。

原因、症状、治療法、予後

 後縦靭帯骨化症の原因は諸説あり(※4)特定には至っていませんが、遺伝的背景が大きな役割を成しているとも示唆されており、多発系家計の遺伝子解析などの研究が進行中です。初期症状として頸部痛や上肢の痺れ・痛みが発生し、進行して下肢の痺れ、痛み、筋力低下や反射異常などが発生します。さらに進行して麻痺等が進めば、転倒などの軽微な外傷で重度な麻痺や憎悪を引き起こす場合があると指摘されています。
 治療法としては、初期症状では頸椎装具の装着や薬物により安静を保ちますが、症状が進行すると手術により症状を緩和させます。術式については、後方からの椎弓形成術が選択されることが多く、症状によっては前方除圧固定が選択される場合もあります。
 病状が大きく進行した場合の改善率は約半数とも言われ、再悪化する傾向が多くあるため、予後は特に動的な圧迫(外圧、衝撃など)を避ける必要があります。

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※1 脊柱:頭骨から7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、1個の仙椎が、椎間板、椎間関節、靭帯により連結した部位/背骨
※2 靱帯:コラーゲンを主成分とする強靭な結合組織を持つ繊維束で、骨と骨を繋ぎ 関節 を形作ったり補強する役割を持つもので、前縦靱帯(ぜんじゅうじんたい)、後縦靱帯(こうじゅうじんたい)、黄色靱帯(おうしょくじんたい)、棘間靱帯(きょっかんじんたい)、棘上靱帯(きょくじょうじんたい)などに分類
※3 脊髄:脳と手足などの末梢神経を橋渡しする中枢神経系の部位
※4 カルシウム代謝異常、ホルモン異常、遺伝、糖尿病、炎症など

参考文献等(外部リンク)

MI:心筋梗塞について

心筋梗塞とは

 心筋梗塞(MI:Myocardial Infarction)とは、心臓を動かす冠動脈(※1)が閉塞し、心筋に血液が行き届かなくなり心臓が壊死してしまう病気で、狭心症と合わせ虚血性心臓疾患と呼ばれます。

原因、症状、治療法、予後

 心筋梗塞は動脈硬化が主な原因と言われています。高血圧や脂質異常等により血液循環が滞った状態が「狭心症」と言われる症状ですが、さらに動脈硬化が進んだ場合、血管の内側にコブの様な塊が発生し、それが破裂して血栓ができ血管を塞いでしまう状態を「心筋梗塞」と言います。ただし、現在では必ずしも狭心症の悪化により心筋梗塞を発症する訳ではなく、脂質異常による脂質のコブの突然破裂や、他の病気等による何らかの塊により血管を閉塞するという自覚症状がないケースも増えてきており、その他として冠動脈の痙攣・炎症も心筋梗塞を引き起こす要因の一つと言われています。
 自覚症状がある心筋梗塞では、胸痛や胸の圧迫感・違和感が数分繰り返され、その後発生頻度が増し、症状が悪化して重症に至ります。初期では、安静状態で治まることが多いため放置しがちとなりますが、そのままだと徐々に症状が大きく激しくなり、呼吸困難等(※2)に陥ります。
 治療法としては、狭心症の初期症状では生活改善(※3)を試み、症状が改善されない場合は薬物投与による治療を行います。それでも改善が見られず心筋梗塞に至った場合は手術による治療を行います。術式は、カテーテル・インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス手術に大別されます。選択方法として、急性時や手術可能医療機関の多さからPCIが選択される場合が多いのですが、梗塞を再発しやすいという欠点もあります。一方、冠動脈バイパス手術は再発こそしにくいのですが、高度な技術を要することから採用する医療機関は少ないという欠点があります。
 予後においては、前述の生活習慣(※3)を改善し運動により代謝を上げ、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙などのリスク要因を排除することが必要です。

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※1 冠動脈:心臓から大動脈が出る箇所を起点とした心臓表面を網羅する冠状血管を言い、右冠状動脈と左主冠状動脈の二つに分かれ、左主冠状動脈は左回旋枝と左前下行枝に分岐する/(例)握った右手に、左手親指から中指までの三本指を覆った状態
※2 その他症状として、冷や汗や吐き気などによる顔面蒼白、脱力感、動機・めまい、失神、ショック症状など
※3 高血圧や脂質異常は粗悪な生活習慣が原因となる場合が多く、過労、睡眠不足、ストレス、過食過飲、喫煙などが主な要因

参考文献等(外部リンク)

Rehabilitation:リハビリテーションについて

リハビリテーションとは

 リハビリテーションとはラテン語のre(再び)+habilis(適する)が由来で、元々は棄損された尊厳・権利・人権をあるべき姿に回復することとして捉えられてきました。そのリハビリテーションには、医学的、職業、社会、教育リハビリテーションとリハビリテーション工学という大きく5つの分野があります(公益社団法人日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD)HPより抜粋)。当WebSiteでは特に医学的リハビリテーションの説明が中心となります。
 リハビリテーションを実施する目的は、患者の運動障害・感覚麻痺や言語障害などに対し、他の専門職と協同して患者個人が抱える問題の解決の手助けを行うことです。

リハビリテーション専門職と医療スタッフ

 リハビリテーションの専門職は大きく次の種類があります。
  ★理学療法士(PT:Physial Therapist):運動療法により身体機能の改善を図ります。← 体の支え
  ★作業療法士(OT:Occupational Therapist):日常生活での自立を心身において指導します。← 心の支え
  ★言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist):言語障害、難聴、咀嚼などの機能治療について、他の医療スタッフと連携して指導します。← 視聴覚と食の支え
  ★臨床心理士(CP:Clinical Psychologist):認知機能などの評価と治療・支援を行います。← 脳と神経系の支え
  ★医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker):保健医療分野での社会福祉士 ← 社会的活動の支え
 これに、本来の医療スタッフである医師、看護師、看護補助者、薬剤師、栄養管理士等が加わり、多面的且つ専門的に患者及びその家族を支えます。

それぞれの疾患とリハビリテーション治療

 医学的リハビリテーション治療(以下「リハビリ」という。)には様々な疾患(※1)に応じた治療方法がありますが、ここでは当WebSiteが掲げる脊髄損傷と心疾患のリハビリを対象とします。

脊髄損傷のリハビリテーション治療

 脊髄損傷による急性期のリハビリは損傷を拡大させないことで、先ずは投薬や手術による身体の安定化を図ります。急性期では神経系の損傷等により自身で身体を動かせないことが多いため、褥瘡(床ずれ)防止のための体位変換、呼吸訓練、関節可動域訓練を行いながら、早期に将来の障害残留度を予測し、以降のリハビリ計画を策定します。
 急性期を過ぎ全身の状態が安定すればより積極的(※2)なリハビリに移行します。脊髄損傷では比較的早期に後遺症の残留程度が判明することが多いことから、具体的なリハビリ計画を立て実践して行きます。ただし、脊髄損傷の場合、受傷前の状態に戻すことは不可能に近いことから、今後の生活度を上げるための身体を作り上げることになります。

心疾患のリハビリテーション治療

 心筋梗塞などの虚血性心疾患の入院期間は依然と比べて大きく短縮(※3)されてきていることから、早い段階からリハビリを開始することができます。しかし、先ずは心疾患の原因となる生活習慣を改善することが必須で、これを疎かにすると以降にどのようなリハビリを行っても身体が回復する見込みは少ないでしょう。よって、心疾患のリハビリは生活の質向上(QOL:Quality Of Life)、長期予後の改善、循環器病の再発予防、心理カウンセリングと多面的・包括的に進められます。

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※1 主な疾患例:脳卒中、運動機能の疾患・外傷、脊髄損傷、神経筋疾患、外傷・血行障害による四肢等切断、小児疾患、関節リウマチ、心疾患、呼吸器疾患、摂食嚥下障害、悪性腫瘍、内部障害
※2 身体の回復に応じたリハビリは、急性期~回復期~維持期(生活期)の三段階
※3 症状の重度にもよるが以前は3週間以上の安静臥床 → 近年では2~3週間程度の入院

参考文献等(外部リンク)