OPLLの回復期リハビリテーション -1-(序)

燕の雛たち Experiences
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 受傷後1か月半の時を経て、県内のリハビリテーション専門病院に転院した。移動中、外の景色を望むことがあったが、この地方の2月下旬にしてはまだ沢山の雪が残っていた。
 この病院の外来・病棟・検査・処置室などの施設そのものは真新しいが、昭和後期からの歴史ある病院で、整形外科等の常設・非常設科・専門家外来併せて25科並びに「こども支援センター」を持つ専門病院だ。

現状把握

 着いて早々に担当看護師との打ち合わせを終えた後、車椅子に乗せ換えられ、とある階の眺めの良い訓練室に連れて行かれた。外の景色をまともに観たのは久しぶりだ、という感慨にひたる間もなく担当医師から
 「目の前にある平行棒に掴まって立ち上がってみてください。」
とのこと。この時点での私は100%補助が無いと立ち上がることは不可能な状態だったので、最初は断ったが
 「今後のリハビリテーションの計画を策定するために必要で、出来なくても良いのでトライしてください。」
と言われ、渾身の力を振り絞ってやってみた。後ろからスタッフが手を添えてではあったが、何とか立ち上がることができた。しかし、著しく脚の筋力が落ちている私は数秒しか立っていられず、情けなくペタンと車椅子に座り込んでしまった。だが、この状態を見た医師は
 「この状態でしたら車椅子での退院は可能となるでしょう。我々スタッフは全力でサポートしますので、お互いがんばりましょう。」
と心強い言葉をもらった。寝たきりと車椅子での生活では雲泥の差がある。
 いよいよ明日から訓練が始まる。当日のリハビリテーション内容はその日の朝に配付されるらしい。という訳で、入院初日の晩は訓練への期待感などでなかなか寝付けなかった。

目標設定

 本格的な訓練に入る前に、医療スタッフは患者と話し合いながらリハビリテーション計画を策定しなければならない。私の場合、作業療法と理学療法が主となるが以下の目標を立ててみた。

  • ベッドから自力で起き上がれるようになること(寝返りができるようになること)
  • ベッドから車椅子等の補助具に移動できるようになること(その逆も然り)
  • 早期にスマートフォンが使えるようになること(家族や職場との連絡に必須)
  • 箸を使って食事が出来るようになること(可能であれば利き手)
  • ペンを持って字や絵を書けるようになること(自力での書類作成他)
  • 着替えが出来るようになること(立位に拘らない)
  • 薬の管理が出来るようになること(切る、押し出す、摘まむ)
  • 自力排泄が出来るようになること(排泄コントロールは中枢神経損傷者が抱える最大ネックの一つ)
  • 歩行器等による自立歩行が出来るようになること(最終的には補助具に頼らない自立歩行を目指す)
  • PCのキーボードやマウス操作が出来るようになること(正確性を求めるが、速さに拘らない)
  • 自動車の運転が出来るようになること(安全運転であれば距離数に拘らない)

 おそらくこの目標を見た健常者は、然も当たり前のことを何故難しそうに書いているのか不思議に思われるに違いない。それだけ中枢神経を損傷するとあらゆる動作に不都合が生じるばかりでなく、場合によっては機能不全となって日常生活に多大な影響を及ぼすのだ。
 では、「こうなる前に予兆はなかったのか」と思われる節もあるかと思うが、これについては別に記すのでここでは触れずおくことにする。