OPLLの回復期リハビリ -11-(日常生活に近づく)

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 作業療法のリハビリは一見地味だが、日常生活をいかに快適に過ごすかや仕事をいかに負担なくこなせるかなど、その出来如何によっては精神的負担は相当違う。変な言い回しかもしれないが、理学療法はマクロ的な復帰を目指し、作業療法はミクロ的な復帰を目指すということで、リハビリのバランスが取れているのではないだろうか。

キーボード・マウスを操作する

 箸を使っての小豆の移動が不器用ながらも出来るようになると、次なる指先の訓練はパソコンのキーボード・マウスの操作訓練だ。PCに触れるといよいよ現実が近づいてきたな、という気持ちが湧いてくる。とは言っても出来る運指はPC初心者のそれだ。私自身、ブラインドタッチは全く出来なかったが、不思議とキーボードを打つスピードは極端に遅くはなかった。しかし、このリハビリでは人差し指で一つひとつ打つのがやっとだ。これでは社会復帰を果たしたとしても「貴方の仕事はいつ終わるのか」と言われかねない。これ以降、手・指の訓練に熱が入ったのは言うまでもない。

輪投げ・お手玉を投げる

 社会復帰の為には手指のリハビリだけでは終われない。輪投げ、お手玉投げなどによる肩・腕の可動域を拡げる訓練も始まった。私は手足共に右側の回復が遅かったため、物をつかむときは左手が主となり、上着を着たりズボンをはく時は動き辛い右側を先にしないと上手く行かない。特に利き手側である右肩の動きの悪さ(痛さ)はリハビリだけでは如何ともし難く、後に肩関節への局所注射により多少の緩和を確認したが、結局左側と同じように動くようにならなかった。
 後日談になるが右腕・肩の可動域は、入浴後などで身体(特に背中)を拭くときに、積極的に右腕を上に挙げて行うことを毎日続けることで改善されてきている。 

バスタブを跨ぐ

 少し経ってバスタブを跨ぐリハビリもメニューに加わった。前述のとおり右側の動きが悪いため、40cmの高さがあるバスタブを跨ぐことなど到底無理だった。しかし、リハビリ専門病院ではこの様な場合でも訓練できるよう工夫されている。即ちバスタブが上下するのだ(但し、バスタブの深さは変わらない)。
 浴室用の手すりにしがみつきながら、僅か10cmの高さを跨ぐことから始まり、日を追ってその高さは徐々に高くなる。脚が自分の意志どおりに動かないので大変な思いをするが、これが出来ないと一人で入浴する許可は下りない。家に帰っても見守られながら入浴することになるのだ。
 「跨ぐ」という行為は、”OPLLの回復期リハビリ(歩きの進化-2-)”に記載した、平行棒につかまっての腿上げ横移動の訓練が効果を発揮したと思っている。おかげで退院前にはバスタブを跨げるようになっていた。

その他の日常生活訓練

 日常生活のためのリハビリは多い。料理をする場合、麻痺の箇所によっては包丁やナイフの使い勝手が悪くなり、そのため怪我などにつながったり、加熱でもたついて料理をダメにしてしまうこともあるため、訓練は正確性と時間との勝負になるだろう。加えて調理師の場合、長時間立ち続けているばかりでなく、細かな動きも伴うので体力と体幹を鍛えておかなくては仕事を全うできない。
 また、裁縫や編み物では鋏や針などを使うため、手・指の器用さと正確性が求められる。これも、それらを生業をしている方にとっては時間との勝負となる。
 その他、私自身は経験していないので詳しくは紹介できないが、言語、聴覚、咀嚼(嚥下)などの身体の一部に特化したリハビリも、症状によっては様々な方法があるらしいので、障害をもっていても諦めず取り組むことが必要と思う。