転院して約2か月半が経ち、私の行動範囲は少しずつ拡がっていった。先ずは車椅子による院内の移動が自由になり、これにより売店での買い物が好きな時間に出来るようになった。
リハビリ・メニューも新たにサイドステップと反復横跳びが追加された。反復横跳びは、ご存じのように左右へ3歩ずつステップしながら横往復するのだが、通常の体力測定同様に一定時間内での回数がノルマとして与えられる。勿論できなかったとしても何のお咎めも無いのだが、達成感が欲しくて頑張ってしまう。達成すると今以上のノルマが与えられる、とイタチごっこの様相を呈しているが「これもまた楽し」だ(決して被虐性がある訳ではない)。
階段昇降も1階から6階の最上階まで、休みながらではあるが手摺につかまらず一往復できるようになった。ここの病院の6階からの眺めはとても良く、晴れた日は市街や郊外の田園風景が一望できる。話が逸れてしまったが、階段昇降のリハビリは手摺につかまらず如何に昇り降りできるかが最終課題となる。登りはよい、筋力と体力があれば登ることができる。問題は降りるときだ、どうしても最初の一歩が踏み出せない。踏み面(※1)にうまく足が乗らなかったらそのまま転落だ。リハビリ中は、PTの方がいつでもサポートできるよう構えてくれているので安心している。しかし、退院後は一人で階段を昇り降りしなければならない事も出て来る。殆どの階段は踊り場(※2)があるため、真っ逆さまに転げ落ちることは無いだろうが、OPLL患者の場合、もし転げ落ちた時の衝撃は、恐らく重度の麻痺や憎悪では済まないかもしれない。リハビリでは出来たとしても、社会復帰後の階段昇降を実際どうするか(手摺を使うか、又は杖をついて降りるか)は最後まで悩みのタネであった。
そうこうしている内に、行動範囲は病棟内自立から病院内自立となった。この頃になると、階段昇降は手摺なしで1階から6階まで4往復できるようになっていた。勿論PTの方のサポート付きである。サイドステップも10m往復を20セットできるようになっていた。
そして此処での入院生活も3か月が過ぎようとする頃、病院敷地内での外回り歩行も単独自由となった。こうなるとリハビリは、歩行距離を休みなく何処まで伸ばせるか、又段差のある箇所を如何に不安なく通過できるか、となってくる。ここまでくると、もう退院の日は決まっている。やり残して後悔しないよう頑張るだけだ。
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※1 踏み面(ふみづら):階段の平面部分。
※2 踊り場:階段の途中に設けられるやや広い平らな場所。階段の折り返し箇所に設けられ、一気に転落するのを防止する効果もある。
OPLLの維持期(生活期)リハビリ -17- [2019/9]