OPLLの回復期リハビリ -6-(ロボットを使う-2-)

この記事は約3分で読めます。

ウェルウォーク

 レール走行式免荷リフトでの訓練は私の身体に合わなかったようで、誰の目から見ても相当ぎこちなく又、危なっかしく映っていたと思われる。病院スタッフの機転により別のマシンを使った訓練をすることになったのだが、それが「ウェルウォーク(※1)」を使ったリハビリだ。
 これは脳卒中の後遺症がある患者に使用するものなのだが、麻痺が残る症状が似ているということで試験的に実施してみることになった。本来は片麻痺での運用が多いということなのだが、私は片麻痺というより左が僅かに動くという全麻痺に近い状態だったので、スタッフは「OPLL患者に試すのは初めてですので、無理でしたら直ぐに中止します。」とのことだった。
 しかし、私には(これが無理だったら私の社会復帰は確実に遅れてしまう。多少無理をしてでも歯を食いしばって耐えて頑張るしかない!)という気持ちが沸々とわいていたのだ。

 スタッフから入念にレクチャーを受け、しかも実際に歩いて見せてくれたのでイメージは完璧だ。上から吊るされたハーネスを身に着け、殆ど動かない右脚にロボットを装着する。準備完了だ。
 ハーネスが巻き上げられ私の姿勢は立位になり、両サイドの補助バーに両手を添える。すると、正面の大型モニタに私の正面の姿が映し出された。初めてのことなので、私の前後にはスタッフがいつでも私を受け止められるよう構えてくれている。

 「始めます。」スタッフの掛け声と共にトレッドミルが動き出す。両腕で出来る限りの体重を支えながら、走行ベルトの速さに沿って先ずは左脚を前に出す。するとどうだろう、ロボットを着けた右脚が勝手に膝を曲げると共に後ろに下がり、爪先を立てベルトを蹴って、その脚を前に出しているではないか。
 (右脚が動いている…)慌てたのは左脚だ。両腕である程度の体重を支えていて良かった。もたつきながら右脚に追従するような形で左脚を交互に動作させる。(あんなに動かなかった右脚が動いている…)勿論、機械負荷100%なので私自身の右脚は何の働きもしていない。しかし、これにより暫く沈黙していた右脚の神経系と脳との回路が修復され、運動能力を呼び覚ます感覚が出てきたのだ。ここで漸く気付いて辺りを見渡すと、たくさんのスタッフが周りを囲んでいて、注意深く私の訓練模様を観察していた。
 暫く走行ベルトを歩いた後、スタッフの「停止します。」の掛け声でベルトの動きはどんどん遅くなる。流石に最初は、止まるときの感覚が分からず後ろに倒れこみ、スタッフに身体を支えてもらった。

 感想は「とても良い」だ。私に合っている。歩いている姿が正面のディスプレイに映し出され、それは正面だけでなく側面、上部と様々な角度で映し出されるので、自分の歩行姿勢や脚・膝の角度が視覚的に認識できるため、リアルタイムで良くない部分を補正しやすくなる。私はすぐスタッフに、このリハビリの継続を願い出た。実際、このリハビリは自立歩行が出来るようになるまでの間、続けられることになる。

———- + ———- + ———-
※1 ウェルウォーク(Welwalk):トヨタ自動車と藤田医科大学が共同開発した歩行訓練ロボット。下肢に装着するロボットの働きを利用して、トレッドミル(走行ベルト)上を歩行するが、歩行中は安全ベルトの装着により転倒の危険がなく、安心して訓練を行える機械となっている。また、患者の障害度などに応じて0-100%と細かく負荷を調節できるので、重度から軽度まで幅広く適用できる。筆者が経験したウェルウォークはWW-1000型で、今はWW-2000型が最新型となっている。

参考文献等(外部リンク)