作業療法のリハビリは一見地味ですが、日常生活をいかに快適に過ごすかや、仕事をいかに負担なくこなせるかなど、その出来如何によっては精神的にかかる負担は相当違います。
日常生活をスムーズに営むために
キーボード・マウスを操作する
箸を使っての小豆の移動が不器用ながらも出来るようになると、次なる指先の訓練はパソコンのキーボードとマウスの操作訓練です。
PCに触れると「いよいよ現実が近づいてきたな」という気持ちが湧いてきます。とは言っても出来る運指はPC初心者のそれです。私自身、ブラインドタッチは全く出来なかったのですが、不思議とキーボードを打つスピードは絶望するような遅さではありませんでした。

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しかし、このリハビリでは人差し指で一つひとつ打つので精一杯。これでは社会復帰を果たしたとしても「貴方の仕事はいつ終わるのか」と言われかねません。これ以降、手・指の訓練に熱が入ったのは言うまでもありません。
輪投げ・お手玉を投げる
社会復帰の為には手指のリハビリだけでは終われません。輪投げ、お手玉投げなどによる肩・腕の可動域を拡げる訓練も始まりました。私は手足共に右側の回復が遅かったため、物をつかむときは左手が主となり、上着を着たりズボンをはく時は動き難い右側を先にしないと上手く行きません。特に利き手側である右肩の動きの悪さ(痛さ)はリハビリだけでは如何ともし難く、後に肩関節への局所注射により多少の緩和を確認しましたが、結局左側と同じように動くようにはなりませんでした。
後日談ですが、右腕・肩の可動域は入浴後などで身体(特に背中)を拭くときに、積極的に右腕を上に挙げて行うことを毎日続けることで多少改善されました。
バスタブを跨ぐ
少し経ってバスタブを跨ぐリハビリもメニューに加わりました。前述のとおり右側の動きが悪いため、40cmの高さがあるバスタブを跨ぐことなど到底無理でした。しかし、リハビリ専門病院ではこの様な場合でも訓練できるよう工夫されています。即ちバスタブが上下するのです(但し、バスタブの深さは変わらりません)。
浴室用の手すりにしがみつきながら、僅か10cmの高さを跨ぐことから始まり、日を追ってその高さは徐々に高くなる。脚が自分の意志どおりに動かないので大変な思いをしますが、これが出来ないと一人で入浴する許可は下りません。家に帰っても見守られながら入浴することになるのです。
「跨ぐ」という行為は、平行棒につかまっての腿上げ横移動の訓練が効果を発揮したと思っています。おかげで退院前にはバスタブを跨げるようになっていました。
その他の日常生活訓練
日常生活のためのリハビリは沢山あります。料理をする場合、麻痺の箇所によっては包丁やナイフの使い勝手が悪くなり、そのため怪我などにつながったり、加熱でもたついて料理をダメにしてしまうこともあるため、訓練は正確性と時間との勝負になるでしょう。加えて調理師などのプロの場合、長時間立ち続けていなければならないばかりでなく、繊細な動きも伴いますので体力と体幹を鍛えておかなくては仕事を全うできません。
また、裁縫や編み物では、鋏や針などを使うため手・指の器用さと正確性が求められます。これも、それらを生業をしている方にとっては時間との勝負となります。
その他、私自身は経験していないので詳しくは紹介できませんが、言語、聴覚、咀嚼(嚥下)などの身体の一部に特化したリハビリも、症状によっては様々な方法があるらしいので、障害を持ったとしても諦めず取り組むことが必要だと思います。
兎に角、焦りは禁物。「一生かけて治して行く」それくらいの気持ちで取り組まないと。上手く行かなくなって心が折れたり短気を起こしたりして、そこで止めてしまっては元も子もないのですから。
