回復期リハビリでの自動車運転訓練(OPLL-7-)

後縦靭帯骨化症
この記事は約5分で読めます。

 病院での自動車運転訓練とは、実車での訓練ではなく運転シミュレータによる模擬訓練です。しかし、最初から模擬運転させて貰える訳ではなく、先ずは両腕を使ってハンドルを左右に回すことから始まります。
 腕・肩が自由に動かない私は、この最初の訓練から苦労しました。正面のディスプレイ上では、何処までハンドルを回せば良いかの目盛りが表示され、その数値以下でも以上でもいけない。実践ではコーナーを回る角度に対し、正確にハンドルを操作しなければならないからです。

 次はブレーキを踏む訓練。現代の自動車は、進むことについてはハンドルに組み込まれたスイッチ類で速くも遅くもできるし、条件によっては前車両に追従して速度を変化させたり止まったりもできます。
 もっと高級車になれば、飛び出しに対しての回避動作や緊急ブレーキも自動で作動するものもあります。しかし、これらの機能はあくまで補助的なもので、如何なる条件下でも100%確実に作動する訳ではないことから、最終的にはドライバーの判断と動作にかかっています。

© いらすとや

自動車の運転で一番大事なことは「如何に早く・正確に止まることができるか」です

 当たり前のことですが、クルマは動くから事故が起きます。世の中の悲惨な交通事故は、止まるべき所で止まれば起きなかった事が多いのですから。そのため、止まるための訓練をしなければなりません。
 特に脚(足)に不自由さを感じる者で、確実にブレーキを踏むことが出来ない場合、例え生活に多少の不便さを感じたとしても自動車の運転は差し控えるべきと考えます。そのため、運転シミュレータによる模擬訓練では、ブレーキを早く正確に踏めるようになるまでは次の段階に進めないのです。

 ブレーキ訓練の合格ラインは、アクセルを目一杯踏み込んだ状態から正面のディスプレイ上のランプの色が変わった後、0.8秒以下でブレーキが確実に効き始めるまで踏み込まなければならなかったと記憶しています。それが常に出来るようになってようやく運転模擬訓練に進むことができるのです。

ブレーキの踏込反応時間として、一般的な反応時間(危険察知からブレーキを踏むまでの時間)は、0.6~1.5秒程度で平均0.75秒と言われています。

 この病院では運転シミュレータが2台あって、最新型は正面の大型ディスプレイに加え、左右にも大型ディスプレイがドライバーを囲むように設置されています。動きはリアルで、ハンドルやアクセル・ブレーキの反応速度は実車に近く、停車している車や物陰から子供や色々な物が頻繁に飛び出してくるため、対向車に注意しながら回避・停止行動をとらなければなりません。また、交差点で右・左折する場合、対向直進車だけでなく左後方からの二輪車にも注意が必要です。ウインカーを出した時はドアミラーやバックミラーに何も映っていなかったのですが、左折直前になって出現したりして結構ヒヤリとした憶えがあります。
 なお、実際に運転する際には、自動車教習所で何日か実車走行に慣れてからにした方が良い、との事であることを付け加えておきます。


 退院間近になると自宅への日帰り外出が許可されます。病院という場所は、当たり前のことですが患者に対して支障をきたさないよう整備されており、空調・トイレ・生活動線等様々な環境が良好となっていますが、自宅では新築時から余程考慮しない限りそうなってはいません。

私の入院していた病院では、退院間近になると予定日の数か月前から医療ソーシャルワーカーを含む病院スタッフと共に、退院後の自宅環境についての話し合いがあり、不都合部分については事前に改修工事や補助器具設置などを行い、障害者にとって大きな不自由がないよう努めるようにされていました。

退院後の生活を大まかに括れば、
 ① 殆ど健常者と変わらず動くことが出来る
 ② 多少の補助は必要だが何とか日常生活が送れる
 ③ 行動範囲が狭く常時補助が必要である
の三択だと思います。

 つまり後者の二つにおいては、障害を持った方が退院後に病院と自宅での生活のギャップによって肉体的負担及び精神的ストレスが生じないよう、又は緩和できるよう、後付けで様々な改修工事や物品の設置をしなけばならないということになります。

 自宅に到着すると、先ずは事前にチェックしていた箇所に問題がないか確認します。不都合箇所があればチェックし、病院に戻って再度ミーティングを行い解決策を模索します。内容によっては修正箇所が退院後になる事もあるので、それまでの注意点を確認しておきます。

私の場合は
① 玄関の階段部分に固定手摺を設置する。
② 玄関の上がり框の手前に踏み台を置いて、蹴上動作を小さくする。
③ 玄関、便所、浴室の脱衣室の入り口に固定手摺を設置する。
④ 就寝形態を床からベッドに切り変え、ベッド横に稼働式手摺を設置する。
を実施するようにしました。

 退院が間近になると準備しておかなければならない事が増えてきますが、約半年ぶりに自宅での生活が待っていると思うと苦にはなりません。と、同時に今までお世話になった病院スタッフの方々との別れが近いと思うと少し寂しい気分でもあります。

 退院直前になると、管理栄養士の方から食事の内容や摂り方についてのレクチャーを受けます。当初は車椅子での退院を目指して入院してきましたが、完全では無いにしろ自立歩行で退院できたことは病院スタッフ皆様の力添えがあってこそ!ここまで担当医や各療法士、看護師、補助士などの方々を「病院スタッフ」と一括りにしてきましたが、本当はこのような簡単な言葉に出来ない程お世話になりました。これまで実名は避けてきましたが、この経験談を読まれた中で、該当する方がいらっしゃったら、ある程度の検討がついている方もおられるだでしょう。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

自分一人ではこのような回復は望めなかったでしょう。」
先生はじめ病院スタッフの皆さんにはとてもお世話になりました。ありがとうございます。」
そして妻や家族、親戚、友人、職場の方々にも沢山お世話になり、とても感謝しています。」


 6月13日退院。回復期病院に入院してから115日目、急性期病院の入院期間を含めると152日目のことでした。