後縦靭帯骨化症(OPLL)とは
後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう、OPLL)は、背骨の中を通る靭帯が骨のように硬くなることで神経を圧迫し、手足のしびれや運動障害を引き起こす疾患です。
後縦靭帯骨化症(OPLL)は、発症の原因がいまだ明確に解明されておらず、根本的な治療法も確立されていない疾患です。そのため「難病」と呼ばれています。
初期には、後頭部や頸部の痛み、肩こり、手のしびれや痛みといった症状がみられることがあります。進行するにつれて、足のしびれや痛み、感覚の鈍麻、手足の筋力低下、腱反射の異常、さらには排尿・排便障害などが現れる場合もあります。
最初に見てほしい|後縦靭帯骨化症(OPLL)の初期症状チェックリスト
私の体験として、後縦靭帯骨化症(OPLL)発症前には以下の症状が段階的に起きていました。
- 寝違えや同じ姿勢による「慢性的な首のこり」
- 慢性的な首や肩の痛み
- 腕や手指のしびれ、手足末梢の冷え
- 首を後ろに反らしたときの痛み
- ジャンプ時の首へのしびれや痛み
繰り返す寝違えはサインかもしれない
では、明確な初期症状より前に、何らかの前兆はなかったのでしょうか。今振り返ってみると、最初のきっかけと思われるのは「急性疼痛性頸部拘縮」、いわゆる「寝違え」でした。
当初は2~3年に一度程度でしたが、次第に発症間隔が短くなり、いつの間にか毎年のように繰り返す状態になっていました。「寝違え」は原因を特定できないことが多いとされていますが、私の場合は、長時間のパソコン操作によって頸部に負担がかかり、炎症が起きた状態を十分に回復させないまま日常生活を続けていたことが影響していたのではないかと考えています。
公益社団法人日本整形外科学会によると、
「眠っていて目が覚めたときに、首の後ろや首から肩にかけての痛みが出ることがあり、いわゆる「寝違え」と言います。(中略)同じ姿勢の持続(飲酒後の睡眠や疲れ果てての睡眠などでは寝返りが少なくなる・パソコンや事務作業が長時間に及ぶと頭を一定位置に保持するために頸部の筋肉に負担が生じる)、が原因の場合が多いと思われます。」
公益社団法人日本整形外科学会[寝違え]より一部引用 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprained_neck.html
とされていて、他にも「寝違え」症状を出す原因は多くあります。
同じ姿勢は首に大きな負担をかける
また、前屈姿勢(パソコン作業やスマートフォン操作など)や、逆に首を常に反らしている姿勢で首に長時間負担をかける動作は、頸椎症や頸椎ヘルニアなどの一因になるとも言われています(注2)。日常的に首への負担を減らす姿勢を意識することは、予防の一つと考えられます。
💡補足
注2:極度な前屈位や後屈位での首に掛かる負担は、最大で約20〜30kg程度の負荷がかかるとも言われています。
軽度の症状が改善しないまま時間が経過すると、状態は徐々に悪化していきます。初期にみられる「首の痛み」「肩こり」「手のしびれ」などは比較的軽いため、深刻に受け止められないことが多く、その裏に難病が潜んでいるとは考えにくいものです。
ただの寝違えだと思っても、頻発する場合は首の骨(頸椎)に何らかの構造的な問題が起きているサインかもしれません。
やがて、首を強く反らしたときや、ジャンプなどで首に振動が加わった際に、首から肩、腕にかけて強いしびれや鈍痛が数分間続くようになりました。その後、手足の冷えを感じるようになり、皮膚の感覚も鈍くなっていきました。
この段階では、できるだけ早く専門医の診察を受けることが重要です。これを放置したまま転倒などで首に強い衝撃が加わると、突然「動作不全」が起こる可能性があります。ここまで進行すると、元の状態に戻ることが難しくなり、生涯にわたって障害が残る可能性が高くなります。
私はそうでしたが、仕事上座りっぱなしで運動不足になりがちでしたので、それが「症状」を悪化させた要因になっていたのかもしれません。
このような老化や身体の衰えを捉え、医学会ではロコモティブシンドロームやフレイルと言って注意を促しています。
座りっぱなしや運動不足は「ロコモ」がはじまっているかも?「50代でも4割の人がロコモ度1」です。40代からのロコモ予防で長く元気に働きましょう!
公益社団法人日本整形外科学会[勤労者ロコモ問題]より一部引用 https://www.joa.or.jp/public/theme_poster_2025.pdf
早期受診が重要な理由
もし、ここに挙げた症状に心当たりがある場合は、できるだけ早く専門医の診断を受けることをお勧めします。私の経験上、しびれや痛みなどの身体の不調は、軽度であればあるほど回復の可能性が高いと感じています。「難病」であっても、早期に気付くことで、健常者とほぼ変わらない生活が送れる可能性もあるのです。
まとめ|体の小さなサインを見逃さない
体の異変は、多くの場合、いきなり重大な症状として現れるわけではありません。小さな違和感や軽い痛み、疲れやすさなど、日常生活の中に紛れる形で現れることが少なくありません。
後縦靭帯骨化症(OPLL)のような難病でも、早い段階で気付くことができれば、症状の進行を抑えたり生活への影響を減らすことが可能になる場合があります。
「いつもと少し違う」という体のサインを見逃さないこと。そして必要なときには、専門医に相談すること。そして、健康診断の結果や体の違和感を軽く考えず、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
それが大きな病気から自分自身を守る第一歩になるのだと思います。
心筋梗塞の前兆については、こちらの記事で詳しく体験をまとめています。
▶心筋梗塞(MI)の初期症状と前兆|患者が気づいた体の異変
☕気付くことの難しさ
何事においても、何かが静かに蝕まれていくとき、その変化は一朝一夕に起こるものではありません。多くの場合、ある程度の時間をかけて少しずつ進行していきます。しかしその過程は、当事者がよほど注意深く自分自身を観察していない限り、なかなか気付くことができません。
そして、その蝕みが限界(臨界点)に達したとき、初めて「取り返しのつかない状態」であることに直面します。最悪の場合、それまで続いていたものが突然停止したり、失われてしまうこともあります。一般には、これが結果として「失敗」と呼ばれる状態なのかもしれません。
私は後日、「組織は合理的に失敗する」(菊澤研宗著)(注1)という書籍を通じて、この構造を知りました。要点を私なりに噛み砕くと、次のように理解しています。
閉鎖された組織の中では、本来は不条理であるはずの行動や判断が、時間をかけて「合理的なもの」として正当化されていきます。一度その不条理を受け入れてしまうと、次に現れる不条理もまた、集団思考によって合理化され、やがて組織は自己修正できなくなり、崩壊へと向かっていきます。一方で、開かれた組織では、環境の変化に応じて自己改革すること自体が合理的な行動となり、不条理なパラダイム(認識の枠組み)を回避することができる、とされています。
💡補足
注1:菊澤研宗(きくざわ けんしゅう):1957- 石川県羽咋市出身、経済学者、商学博士(専門:新制度派経済学、コーポレート・ガバナンス、経営哲学、等)
この考え方を人体に置き換えてみると、非常に示唆的です。自分の都合で病気や身体の異変(不条理)を都合よく解釈し、「まだ大丈夫だろう」と合理化し続けると、人はやがて正常性バイアスに陥ります。そして、明らかな破綻が起きるまで、その不条理を受け入れ続けてしまうのです。こうなると、相当な衝撃や環境の変化がない限り、自分自身では気付くことが難しく、結果として手遅れになってしまうケースも少なくありません。
言うは易しいものの、実行となるとなかなか難しいものです。しかし、不条理に陥らないためには、常に自分の状態を見直し、必要に応じて生活習慣を修正していく「自己改革」を怠らない姿勢が大切なのだと思います。
