前回「発症から退院直後まで(急性心筋梗塞編)」までのあらすじ
急性心筋梗塞を発症し、手術後2週間ほどの入院生活を経て退院しましたが、体力の落ち込みが著しいことに愕然としてしまった私は、このままでは職場での軽作業業務さえままならないと思い、体力回復のためのリハビリに精を出そうと決意するのでした。
先ずは体力の回復を図る
退院直後のリハビリ
9月中旬とはいえ、この年は残暑厳しく日中は30℃を超える暑さが続いていました。職場復帰後はせめて机の前で一日は活動できる体力をつけておかなければならないと思い、先ずは簡単なリハビリとしてウォーキングを始めてみることに。もちろん最初は不測の事態が生じた時のために、家の周辺道路約500mを回るだけとしました。
いざリハビリに向かわん、とソロソロと歩き始めてはみたものの、数十メートルしか歩いていないのにもう息切れしてしまい、ここで一息。また数十メートル歩いては一息入れ、と一向に進みません。少し我慢して歩いていると次第に胸のあたりが重く感じる様になる。それでも我慢して歩き続けると今度は息苦しくなってくる。ここでひと休み。
振り返ると200mは歩いたでしょうか。立ったままですが少し休むと動悸も収まり呼吸も安定してきました。額の汗を拭いながら再び歩き出す。ゆっくり数百メートル歩いては休憩し、また歩き出す。
「20分以上かけて歩いてやっと一周か。」
ちょっと情けなくなりながら取り敢えずは休憩タイム。庭先に設置した椅子に腰かけて呼吸を落ち着かせ、少しずつ水分を補給。10分ほど休んでまた歩き出す。初日はそれらを繰り返しながら4周はしたでしょうか。かかった時間は約2時間。
このセットを午前と午後で繰り返すのですが、大切なことは慌てないこと。先に進みたいのを我慢して必ず休憩時間を入れ、出来るだけ安静な状態で水分を補給することです。しかしこの時、欲求に任せて水をガバガバ飲むのではなく、汗で消費した分よりちょっと多めの量を少しずつゆっくりと補給する。できればミネラルが補給できる飲料水を(糖尿病やその予備軍の方は摂取量などに注意して)少量交ぜながら飲むと良いでしょう。
回復の目標を決める
こうやって歩き始めたものの、どれだけ歩けるようになったらどれだけ回復しているのだろう、と疑問が湧いてきます。数値化することは出来ないのだろうが、せめて回復の目安がつかめたらと思うようになりました。専門的な療法士に付けば良いのでしょうが、この時はそのための手続きに進もうなどとと思いもよらず、只々無理の掛からない程度で身体に負荷をかけて行くことしか考えが及びませんでした。
とにかく昨日より歩数を増やすことだと思い、毎日20~30歩ずつ、休んだ翌日は50歩ほどずつ増やして行くスケジュールを自分に課したのです。
しかし、実際には職場復帰直後は仕事で体力を使い果してしまっていたので、帰宅後のウォーキングはとても辛かった。だが、心に強く決めたことなので、たとえ昨日より少ない歩数しか出来なかったとしても、それはそれで良しとしました。大事なことは続けることだと自分に言い聞かせていたのです。
襲い寄せる煙草の大軍
少しずつ体力が回復してくると次の壁にぶつかりました。
なんと、煙草の匂いにとても敏感になっているのです。離れた所で燻らせただろう、その煙が微かに漂ってきただけで私の喫煙欲求がこみ上げてきます。暫く経っても、既に無くなっているはずの煙がまだ鼻腔に残っている感じがする。
それは、長年の愛煙家だった私には耐えられないほどの苦痛でした。しまいには、あるはずの無い煙草の匂いが脳を刺激し、何度喫煙欲求に悩まされたことか。
反面、それに気づいた私は恐怖をおぼえたのです。そう、煙草は中毒を引き起こすのだ、と。
煙草などの趣向品 = 強い依存症 = 中毒 = 脳の麻痺 = 幻臭(幻覚) = 蝕む身体
まったくロクでもない物に手を出してしまったものです。ですが、その欲求も「死への恐怖」と比べたら大したことはない。幸いなことに、その欲求は長くても数十分で消えて行きました。
飴などを口に含めて紛らわす人も居ると聞いたことがありますが、既に「心筋梗塞=血管の病気」を患っている自分にとって無闇な糖分摂取は差し控えたいので、とにかく仕事に没頭することで気を紛らわすことにしました。また、プライベートでは運動するなどしてやり過ごしたのです。
おかげで1年後には、煙草の匂いを嗅ぐと吐き気を催すほど嫌煙家になっていました。
さて、日常生活でのリハビリはまだまだ続くのですが、この続きは「リハビリによる体力維持・増進(急性心筋梗塞編)」でお会いしましょう。