知らないと損をする「医療費と公的補助」|心筋梗塞・難病OPLLの実体験から

あれこれ
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 大病を患った際、治療への不安と同じくらい重くのしかかるのが「経済的な負担」です。
 日本には世界に誇る「国民皆保険制度」があり、費用を大幅に軽減できる仕組みが整っています。しかし、これらの制度には共通する大原則があります。

それは、「自ら申請しなければ、何も享受できない」ということです。

 私が心筋梗塞と後縦靭帯骨化症(OPLL)を経験した際、どのようにこの「申請の壁」を乗り越え、負担を軽減したか。その実体験をお話しします。

高額療養費制度の活用

 私が急性心筋梗塞で緊急手術を受けた際、療養費は入院費や雑費を除いても170万円を超えました。3割負担でも50万円余り。この負担を抑えるために利用したのが**「高額療養費制度」**です。

  • ポイント: 支払い後に払い戻しを受ける方法と、事前に申請して窓口での支払いを限度額までに抑える方法があります。申請する制度によって違いますが、できることなら支払い後に払い戻しを受けるのではなく、事前に**「限度額適用認定証」**を申請しましょう。

※注記:マイナンバーカード(マイナ保険証)を利用できる医療機関では、原則として事前の申請は不要となる場合があります。詳しくは、入院若しくは通院中の医療機関、又は加入している医療保険の窓口(協会けんぽ、勤務先の健康保険組合・共済組合、市町村の国保窓口など)にお問い合わせください。

  • メリット: 窓口での支払いが最初から自己負担限度額(年齢や所得(標準報酬月額)により変動)までに抑えられ、多額の現金を用意する負担がなくなります。入院経験がない方には馴染みの薄い言葉ですが、これ一枚で「窓口での支払い」が劇的に変わります。

その他の備え

 永続的な障害が残った場合は「身体障害者手帳」の取得が検討されますが、私の場合は該当しませんでした。
 また、民間生命保険や職場の福利厚生(見舞金)も重要です。これらは「いつか申請しよう」と思っているうちに期限切れになるリスクがあります。「できるだけ早期に」動くことが鉄則です。


 OPLLは指定難病(No.69)であるため、一般的な病気以上に手厚い、しかし複雑な支援制度が存在します。

身体障害者手帳の取得

まずは「難病指定医」による診断を受け、診断書(意見書)を自治体に提出します。等級が認定されると「身体障害者手帳」が交付され、税金の減免や公共料金の割引など、多岐にわたる支援が受けられます。

注記:
難病指定医については、「難病情報センター」”https://www.nanbyou.or.jp/”を参照してください。

介護保険の申請(特定疾病)

 意外と知られていないのが、OPLLは40歳以上であれば介護保険の対象となる「特定疾病」だということです。
 私は認定後、ケアマネジャーや理学療法士と「ケアプラン」を練り上げました。この計画が、退院後の職場復帰や生活機能の維持を支える「地図」となります。

特定医療費(指定難病)受給者証

 保健所の窓口へ申請し、審査に通ると「特定医療費(指定難病)受給者証」が交付されます。これにより、指定医療機関での窓口負担が軽減され、「自己負担上限額管理表」によって月々の支払いに上限が設けられます。


 最初は「どこへ行けば良いのか」と不安になるものです。まずは以下の窓口を頼ってみてください。

  • 自治体の「社会福祉課」(障害者ガイドブックが備え付けられています)
  • 病院の「医療ソーシャルワーカー(MSW)」(制度のプロです)

 大事なことは、これらのサービスは「待っていても届かない」ということです。

制度を知り、専門家に声をかけ、期限内に申請しましょう。

 この「一歩踏み出す」アクションは、身体のリハビリと全く同じです。自分自身を助けるために、どうか恥ずかしがらずに助け船を求めてください。

 公的補助を受けるための基本的な事項をまとめてみました。取りあえず、このリストを病院関係者、医療ソーシャルワーカー(MSW)さんやケアマネジャーさんに見せて、相談してみてください。

① 入院中・手術前後(まずは「支払い」を抑える)

  • 限度額適用認定証の申請
    • どこで: 勤務先の健康保険組合や市町村の国保窓口(多くの健康保険組合では、WEB申請フォームや郵送での申請を受け付けているところもあります。 )
    • 何を: 医療機関の窓口での支払いを保険の自己負担限度額(所得に応じた上限)までに抑えるための書類(ただし、マイナンバーカード(マイナ保険証)を利用できる医療機関では、原則として事前の申請は不要となる場合があります。)
  • 医療ソーシャルワーカー(MSW)への相談
    • どこで: 病院内の相談窓口(主に病院内の「総合受付」、「医療相談室」、「地域連携室」、「患者相談窓口」など。)また、「入院のしおり」に相談窓口が記載されていることがあります。介護施設の場合は、施設内の生活相談員(ソーシャルワーカー)へ相談してみてください。
    • 何を: 今後の生活不安、利用できる制度の全体像の確認

② 治療・療養中(「身分」と「継続支援」を確保する)

  • 身体障害者手帳の申請
    • どこで: 市区町村の福祉担当窓口
    • 何を: 難病指定医による診断書(意見書)を添えて申請。税制優遇や割引の基礎
  • 介護保険の要介護認定申請(40歳以上65歳未満の第2号被保険者)
    • 条件:厚生労働省が定めた「16の特定疾病」により介護や支援が必要な状態であること(「後縦靭帯骨化症」は含まれています。)なお、65歳以上(第1号被保険者)の方の場合は、原因を問わず、日常生活を送るために介護や支援が必要となった方が対象
    • どこで: 市区町村の介護保険窓口、または地域包括支援センター
    • 何を: 自宅改修やリハビリ、福祉用具のレンタルに必須

③ 退院に向けて(「生活」を支える仕組みを作る)

  • 特定医療費(指定難病)受給者証の申請
    • 条件:厚生労働大臣が定める指定難病に罹患し、一定の診断基準を満たす場合(「後縦靭帯骨化症」は含まれています。)
    • どこで: 住所地を管轄する保健所
    • 何を: 難病(OPLLなど)の治療費負担を軽減する。ただし、更新が必要なため期限に注意(有効期限は原則1年(1年6か月を超えない範囲)で継続には毎年更新申請が必要)
  • ケアプランの作成
    • どこで: ケアマネジャーとの面談(費用は、ケアマネジャーに依頼する場合、全額介護保険から給付されるため、利用者の自己負担は0円です。)なお、ケアマネジャー(介護支援専門員)への依頼・相談先は、地域包括支援センターか市区町村の介護保険課若しくは病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)へ
    • 何を: 退院後のリハビリ頻度や生活支援の具体的なスケジュール決定
    • 注意点:要支援1・2の場合、地域包括支援センターが直接作成するか、地域包括から委託されたケアマネジャーが担当します。要介護1〜5の場合は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当となります。