口腔嚥下体操はなぜ必要か?
高齢になって心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態を「フレイル」と呼ぶそうですが、その中でも近年注目されているのが「オーラルフレイル」です。これは健康寿命と深く関係しており、日本歯科医師会では次のように説明されています。
私自身の経験ですが、年齢を重ねるにつれて、ある日突然、食事中にむせたり、飲み込んだ際に胸のつかえを感じることが増えてきました。そんなとき、入院中やリハビリ施設で行っていた「口腔嚥下体操」をしばらく続けたところ、少しずつですが飲み込みがスムーズになってきたのです。
「オーラルフレイルとは、噛んだり、飲み込んだり、話したりするための口腔機能が衰えることを指し、早期の重要な老化のサインとされています。」
日本歯科医師会 「オーラルフレイル対策のための口腔体操」https://www.jda.or.jp/oral_frail/gymnastics/
このように、オーラルフレイルは単なる口の衰えではなく、全身の健康にも影響する概念です。口腔機能の衰えを防ぐ、あるいは進行を遅らせるためにも、日頃からの訓練が大切になります。ここでは、私がリハビリ時に実際に行っていた口腔嚥下体操を中心に紹介します。
ただし、ここでご紹介した体操は、原則として医師・歯科医師・言語聴覚士などの専門職の指導のもとで行うことが望ましいとされています。
リハビリは個人差が非常に大きく、「私の場合はこうだったから、すべての方にも当てはまる」とは限りません。
もしご自身で試される場合でも、痛みや強い違和感を感じたときは無理をせず、中止したり、専門家に相談したりするようにしてください。
基本は「ウー・イー」と「パ・タ・カ・ラ」
回復期病院では食事前に、生活維持リハビリ施設では休憩時間に、必ず実施していた「口腔嚥下体操」。この体操は一見して地味で、効果がなかなか見えにくいのですが、長期入院生活者や高齢者には非常に大切な事ですので、該当する方は、ご自宅でもぜひ行ってみてください。
基本は「ウー・イー」と「パ・タ・カ・ラ」の6音の発声と舌先の運動。先ずは発声からで、口を力いっぱい窄めて「ウー」と大きく発声し、続けて口を横一杯に拡げて「イー」と大きく発声します。これを数回繰り返し、次に舌先を口内左(右)の頬に強く押し付け、続けて反対の頬に強く押し付けます。これも数回繰り返します。

©いらすとや
口と舌先の基本運動の後は「パ・タ・カ・ラ」の発声。一文字ずつ大きな声ではっきりと発声しましょう。恥ずかしがらず、何れも大きな声で数回繰り返すことが必要です。
舌の訓練
次に、口を閉じたまま舌を真っ直ぐ出し、それから唇の周りを舐めるのですが、その様子は傍から見ると「何か美味しい物でも食べたの?」と疑われそうです。そして口の中で左右のほっぺを舌で強く押し、歯茎の内側をグルリと舐める様に移動させます。最後に、口内に溜まった唾を「ゴックン」と飲み込む訓練で、これを数回繰り返します。これで基本体操は終了。その後は仕上げで簡単なセリフを大きな声で読み上げます。
パンダの宝物
基本動作が終了したらちょっと高度?な体操となります。題名は「パンダの宝物🐼🎺」と言い、内容は「パンダの宝物は、パパパンダから貰ったラッパ、歩いてパタパタ、鳴らしてパラパラ、高かったラッパで、財布の中は空っぽ」というものなのですが、内容については基本発声音である「パ・タ・カ・ラ」を織り交ぜた物語風のセリフです。なお、このセリフの内容には深い意味はないと思われますので追求しないでいただきたい。
回復期病院では入院中これを毎食前に行っており、スタッフが先行して一区切りずつ読み上げ、患者が続いて発声するのですが、最初は恥ずかしい気持ちが先行してなかなか大きな声を出せませんでした。
しかし、この時の私は還暦間近。そろそろ飲み込みや口周囲の筋肉が衰え始める年齢です。将来の貯金だと思い真剣に取り組みました。
速くない早口言葉
時々病院や施設では、滑舌(口唇・舌の巧緻性)をよくする体操として早口言葉の訓練をします。先ずは定番の「なまむぎ、なまごめ、なまたまご」。焦ると「なまむみ、なまもめ、なまたまも」と濁音の発生が全くできないことがあります。
「隣の客はよく柿食う客だ」は「隣の客はよくきゃくきゅう客だ」と何を言いたいのか分からない。「あおまきがみ、あかまきがみ、きまきがみ」も濁音の発生がむずかしく「あおまきまみ、あかまきまみ、きまきまみ」となってしまいます。
最高レベルになると「隣の竹垣に竹立てかけたのは、竹立てかけたかったので、竹立てかけた」は、「隣の竹垣に竹かけかけヶヶヶヶ」とオバケが笑っているようになってしまう。
大切な事は焦らない事。最初はゆっくりで、慣れたら少しずつ早くして行けばよいのです。大きな声で確実に発声することです。なお、この訓練のときは舌を嚙まないよう注意!
まとめ
口腔嚥下体操は、老化や病気などによって衰えた口腔や、喉の機能を維持又は改善が期待できる体操です。即効性はありませんが長期間継続することにより、飲み込みがスムーズになり誤嚥のリスクを下げることが期待できます。全てではなくても結構ですので毎日続けることが大切です。
